【内製化DX】追加コストゼロ!現場と開発が二人三脚で育てた「組織の体温が伝わる」日報・工数管理システム
Twelfthを運営するデザイン・Web制作会社「カズミア株式会社」が、社内の日報・工数管理・感謝の共有を見直すため、Google Workspaceを活用した独自の仕組みづくりに取り組みました。新しい有料ツールを導入するのではなく、Googleフォーム、スプレッドシート、GAS、Googleチャット、Looker Studioを組み合わせ、現場の声を取り入れながら少しずつ育てていった内製化DXの事例です。
目次

INTERVIEW
カズミア株式会社 代表取締役 萩原 和哉
仕組み化ができていない
創業から10年が経ったころ、代表はそう感じ始めていました。日報にも工数管理にもまとまった形がなく、会社の目指す姿や価値観をまとめたMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)も、社内に浸透しているとは言いがたい状態です。ここに手を付けようと動き出したところから、この物語は始まります。
外部の有償ツールを比較しては見送り、生成AIと対話しながら方向性を探り、最終的に行き着いたのは、追加コストを一切かけず、社内に既にあったGoogle Workspaceだけで組み上げるという答えでした。
その開発をTwelfthが引き受け、現場の声を拾いながら仕組みを少しずつ育ててきました。
ここでは、その一部始終を記録します。
仕組み化に踏み出した理由
創業から10年。スタッフが増え、日々の業務を行う中で、代表は組織のあちこちに仕組みの抜け穴があることに気づいていきます。
仕組み化することは組織を強くする。そう考えて、日報、工数管理、感謝のメッセージ、MVVの浸透という4つを何とか導入できないかと考え始めていました。
工数管理については、クライアントワークのスケジュール自体は回せるようになっていたものの、何にどれくらい時間をかけているかが見えないままでした。無駄な時間や意味のはっきりしないタスクがどこかに埋もれているのではないか。Web制作やデザイン制作は長期化しやすく、利益が出ているかどうか怪しいプロジェクトも度々あったといいます。
日報については、反省やふりかえりが成長につながると感じながらも、そのためのフォーマットがありませんでした。日報を見える化すれば、どんなプロジェクトが動いているか、どんな課題や悩みを抱えているかをスタッフ同士で共有でき、外部パートナーの稼働日も把握できます。代表自身、スタッフが次に何のタスクを行うかを知る手がかりにもなります。
書くのが面倒だと感じるかもしれない。それでも日報は自分の成長やチームのためにつながっていく。ここで悩んでいるなら助けよう、この考え方は良いから伸ばそう、この失敗はチーム全体の学びにしよう。代表がスタッフに日報を伝えたとき、そんな思いを込めていました。
MVVは、最近になってようやく形になったばかりでした。会社らしさを浸透させる意味でも、経営者の考えを知ってもらう意味でも、これを共有していきたいという思いがありました。
感謝のメッセージは、日報の延長線上にある発想です。終業時にその日の感謝を伝え合えば、伝えた側も伝えられた側も、少しだけ気持ちが軽くなるかもしれません。個人のレポートである日報を超えて、スタッフ同士のコミュニケーションが生まれる仕掛けとして構想されました。
外部ツール導入への躊躇
生成AIが今ほど身近ではなかった時期から、外部ツールの検討を進めていました。工数管理や勤怠管理を専門に扱う有償のクラウドサービスをいくつも比較し、1人あたり数百円という比較的安価なものまで目を通していたといいます。
それでも、検討を重ねるほど迷いは深まっていきました。全員に本当に必要なのかわからない。人数分かけ算したサービス料を前に、契約へ踏み切れない。新しいサービスの使い方をスタッフに覚えてもらう負担も無視できません。
ビジネスチャットにはLINE WORKSを使っていたため、LINE WORKS内でできること・連携方法も並行して探っていました。それでも決め手を欠いたまま、時間だけが過ぎていったといいます。
AIとの壁打ちで見えた仕組みの方向性
転機になったのは、代表自身が生成AIに投げかけたひとつの問いでした。

対話を重ねるうちに、頭の中にあった漠然とした構想が少しずつ言葉になっていきます。課題を言語化し、必要な要件を一つひとつ拾い上げていく、いわば壁打ちでした。
整理された要件の骨子は次の通りです。
- スタッフ1人ひとりが作業内容と作業時間を登録できる
- 1日の反省やわくわくポイントを入力できる欄も設ける
- プロジェクトや案件ごとの工数を、全員が見られる形で可視化する
- 金曜の終業時に、翌週に取り組むタスクを入力する
- プロジェクト単位、人単位で集計する
- 週次でメンバーの稼働率を記録し編集できる
- 設定した期間ごとにダッシュボードへ分析情報を表示する
- 月次レポートをPDF出力できるようにする
この対話からは、開発の進め方についても3段階のロードマップが浮かび上がってきました。
フェーズ1は、まず動かす段階です。 収益性の見える化と日々の記録習慣づくりに充てます。
案件登録ではクライアントのステータスを管理できるようにし、工数入力では誰が何の案件にどれくらいの時間をかけたかを日次で記録します。日報はシンプルな形にとどめ、やったことや気づき、明日やることを書けるようにします。
フェーズ2は、分析して改善する段階です。 データが溜まって見えてくる課題に向き合います。
案件別や時間単価で工数を示すダッシュボードを整えるようにします。金曜には来週に取り組むタスクを入力してもらい、メンバーごと、プロジェクトごとの稼働状況を集計するビューも用意します。
フェーズ3は、文化をつくる段階です。 ツールから「会社らしい働き方」を生み出していきます。
感謝の気持ちをハートマークで送り合い、その数を集計する機能。日報をブログのように書き広げていく仕組み。そして基盤整備として、外部サーバー上にデータベースを構築する構想も、この時点では描かれていました。

このようにAIとの壁打ちで得られた方向性をベースに、クライアントは具体化へ舵を切ることになります。
GWSでいいかもという気づき、そしてTwelfthへの相談
カズミアでは2025年から少しずつGWS(Google Workspace)の利用が始まっていました。外部サーバーにデータベースを構築するという、フェーズ3で描かれていたような大掛かりな道とは別に、もっとGoogle Workspace関連のサービスを使い倒せないかという発想が芽生えます。
シンプルなスプレッドシートでプロジェクトの工数管理をしている実例の記事を読んだりする中で、Googleフォームを入り口にするアイデアにたどり着きます。そこからGAS(Google Apps Script、Google Workspace内のサービスを自動でつなぎ動かすためのプログラム機能)ということを知り、私たちTwelfthへ相談として、開発が始まりました。
新しく高額な外部ツールを導入するのではなく、日常的に使っている環境の可能性を再発見する。これが、この後の開発全体を貫く方針になりました。
できあがった仕組み
最終的に組み上げたのは、追加コストを一切かけず、手元にある5つの標準サービスをつなぎ合わせ、カズミアの働き方にぴったり合わせた専用システムです。
軸になるのは2つのGoogleフォームです。
工数管理と日報
工数管理と日報を兼ねるフォームには、日付、名前やプロジェクト名、作業項目、作業時間を入力する項目に加え、行動指針を1つ選んでもらう欄を設けました。そのうえで、日々の振り返りを4つの視点で共有できるようにしています。
ワクワクは今日のポジティブな出来事やよかったこと、気づきを書く欄です。ドキドキは、もっと良くできたはずのこと、改善できたことを振り返る欄。モヤモヤは相談したいことや困りごとを吐き出す欄で、コツコツは次にやることをまとめる欄です。これは翌日の業務にそのままつながります。

案件が複数ある日は、「案件を追加しますか?」という導線で誘導し、送信した時刻をそのまま終業報告として記録します。完了画面には感謝フォームへのリンクを置き、自然な流れで次の行動につなげました。ランダムでMVVや今日の一言、マニュアルの再確認事項が差し込まれる仕掛けも加えています。
サンクスメッセージ
もうひとつのサンクスメッセージフォームは、送る人と送り先、行動指針、感謝のコメントというシンプルな項目で構成しています。
この2つのフォームに寄せられた回答は、それぞれGoogleチャットへすぐに通知され、スプレッドシート上でGASが自動的に仕分け、Looker Studioでグラフとして表示されます。入力してから蓄積され、通知が届き、見える化されるまでの一連の流れが、滑らかに回るように設計しました。
Webアプリ化
運用はここで終わりではありませんでした。
最初はGoogleフォームだけで日々の入力を回していましたが、日々の使い勝手にはどうしても限界がありました。そこで、これらを1つの画面にまとめたWebアプリへとつくり替えました。Googleフォームと同じ入力項目に加え、今月の目標、感情表現(ワクワク、ドキドキ、モヤモヤ、コツコツ)をメニューに加え、代表からのコメントも表示されるようにしました。裏側の仕組みはGASのまま、追加コストをかけずに見た目と操作感だけを磨き上げた形です。フォームという入り口から始め、使う人の手触りに合わせて少しずつアプリへと育てていく。この段階を踏んだことも、内製化ならではの進め方だったと感じています。
BEFORE

AFTER

現場で使ってみて見えたこ
運用が始まってから、クライアントの中には確かな変化が生まれています。
スタッフがその日やったこと、次にやることを、代表側でも把握できるようになりました。感覚だけに頼らず、数字を見た上でスタッフに状況を共有できることは、率直にありがたいと聞きます。
Googleフォームから始まったこの仕組みは、見た目をアプリらしく整えたことでスタッフからも使いやすくなったと好評です。
感情の共有が見える化されたことは、経営者にとってスタッフとのコミュニケーションの質を確かに変えました。MVVや目標をスタッフ全員に一括で周知できる場所ができたことも、日々の運用を支える大きな支えになっています。

5つのGoogle Workspaceサービスが担う役割
今回私たちが目を留めたのは、新しく高額な外部ツールを導入することではなく、日常的に使っていたGoogle Workspaceの可能性を掘り起こすことでした。手元にある5つの標準サービスを、次のような役割でつなぎ合わせています。
- Googleフォームは、デバイスを問わず毎日迷わず入力できる入り口です。
- Googleスプレッドシートは、バラバラに届くデータを自動で仕分ける受け皿です。
- GASは、裏側でデータをつなぎ、自動化を担う黒子です。
- Googleチャットは、日々の気づきや声をリアルタイムに届ける共有の場です。
- Looker Studioは、全体の工数や変化をひと目で捉えるダッシュボードです。

現場との二人三脚、そしてAIという相棒
システムは一度で完成させたものではありません。現場から届く鋭いリクエストを受け止めながら、少しずつチューニングを重ねてきました。ここでは特に印象に残っているエピソードをいくつか紹介します。
自作システムが陥りやすいのは、作った人にしか直せなくなる属人化の罠です。
フォームの質問文を少し変えただけでエラーが出て止まってしまうようでは、運用の現場が疲れ果ててしまいます。そこで裏側のプログラムには、質問タイトルを完全一致ではなくキーワードが含まれているかどうかで判別するルールを仕込みました。おかげで、ワクワクという質問文を現場の雰囲気に合わせて後から自由に装飾しても、システムは1ミリも止まることなく動き続けます。
既存のシステムに現場が合わせるのではなく、実務の変化にシステム側がしなやかに寄り添う。これは、内製化ならではの発想だと感じています。
日報が送信されると同時にGoogleチャットへ内容が通知される仕組みも、最初はすべてが強調表示されていて、情報が密集して読みづらいものでした。
誰の日報かを一瞬で見分けられるよう、名前を最上部に太字で置きたい。逆にプロジェクト名などの太字は普通に戻してすっきりさせたい。現場からそんな要望が届き、あえて削るという引き算を行ったところ、パッと見での認識速度が驚くほど上がりました。
プロジェクトの大きな工数集計には混ぜたくないけれど、今日やった小さな雑務も日報で報告したい。そんな声も現場から上がりました。スプレッドシート上では通常タスクとは別枠の右端へ安全に格納し、工数集計を汚さないようにしています。一方でチャット通知のときだけは、通常タスク一覧の末尾に連番として自然に溶け込んで表示される。データの正確さと、報告のしやすさを両立させるための工夫です。
フォームの冒頭には、会社のMVVなどが毎日ランダムに表示される欄があります。GASの自動トリガーを使い、毎晩深夜1時から2時のあいだにくじを引き直しているのです。マスターの行番号ではなく文字列そのもので判別する設計にしたことで、行の追加や並び替え、見やすくするための空行の挿入も自由にできる、変更に強い仕組みになりました。
現場からの声には、今すぐ直してほしいという切実なものも少なくありません。
そうした場面で頼りになったのが生成AIでした。不具合の原因を切り分けるとき、処理を軽くする工夫を考えるとき、仕様変更にすぐ応えたいとき。AIと対話しながら解決の糸口を探ることで、普段なら数日かかりそうな改修を、その日のうちに現場へ返せることも少なくありませんでした。AIは現場の声に素早く応えるための、頼もしい相棒であることを実感しました。
サンクスメッセージが生む、もうひとつの循環
日報と並んで大切に育ててきたのが、スタッフ同士のありがとうの言葉を循環させる、サンクスメッセージの仕組みです。日報のために整えた、入力してから蓄積され、通知が届き、見える化されるという流れをそのまま生かし、GoogleフォームからGoogleチャット、Looker Studioへとつながる形で構築しました。
感謝の言葉は管理者と、送られた本人へ届きます。日々の小さなありがとうが埋もれることなく積み重なっていく。日報という個人の記録を超えて、スタッフ同士のコミュニケーションが自然に生まれる仕掛けになっています。

おわりに
今回のシステムは、一度にすべてを完成させたものではありません。現場での試行から数えきれないフィードバックをもらい、この文字は見づらい、この項目はここに表示させたいといった日々の細かな声を重ねながら、二人三脚で少しずつアップデートを繰り返してきました。
これこそ、既製品のパッケージツールの導入では決してできないことです。自社のカルチャーや、働く仲間の使い心地に合わせてシステムを自分たちで育てていく。これが内製化の一番の強みだと、私たちは感じています。
効率化やデータ活用の内製化は、遠い世界の話ではありません。今ある環境の可能性を掘り起こし、手元にあるツールを少し工夫してつないでみることから、手の届く範囲のDXは始められます。
| 法人名 | カズミア株式会社 |
|---|---|
| 設立 | 2014年 |
| 所在地 | 神奈川県海老名市 |
| 事業内容 | Web制作、デザイン、企画・運営 |
| Webサイト | https://www.kazmia.jp/ |
Twelfthからのご案内
自社でもやってみたいけれど、GASのコードを組んでチャットと連携させるのは難しそう。Looker Studioのダッシュボードを思うように整えるのも自信がない。そう感じている方がいれば、私たちTwelfthがサポートすることもできます。
御社の運用に合わせた、手の届く範囲のDXを、伴走しながらお手伝いします。どうぞお気軽にご相談ください。
この記事は2026年08月公開の記事です。技術の進化等により一部内容が異なることもございます。
