【内製化DX】つながりを、資産に変える。属人化しない「顧客リスト」をGoogle Workspaceと生成AIで開発

つながりを、資産に変える。属人化しない「顧客リスト」をGoogle Workspaceで内製した記録
Twelfth=12番目
生成AIを活用し中小企業の課題解決に伴走するパートナー
2026.09.10

Twelfthを運営するデザイン・Web制作会社、カズミア株式会社が、メディアやデザイン事業を通じて得た企業や人とのつながりを、担当者の異動や退職があっても途切れさせず会社の資産として残すために「顧客リスト」というシステムを内製しました。代表とTwelfthで共同検討を行い、それぞれが生成AIと対話も重ね、運用と法務の両面からリスクを洗い出しながら磨き上げていきました。

カズミア代表

INTERVIEW

カズミア株式会社
代表取締役 萩原 和哉

つながりを取りこぼしている、という危機感

複数の事業を手がけているにもかかわらず、クリエイティブ事業では「作って終わり」になり、次のアクションにつなげられていない。代表は、そんな課題感を持ち続けていました。

「カズミアは積極的に営業してこないよね」

クライアントからそう言われたことがあります。

良い意味で捉えられる部分もありますが、裏を返せば、機会を活かしきれていないということでもありました。Web制作をしたクライアントから「Webマーケティングはできないのか」と他社に相談されてしまったことも、地域情報を発信するWEBマガジン「noma」運営時に「デザインできるんでしたっけ?」と聞かれてしまったことも、根は同じです。すでにつながっているはずのお客様に、できることを伝えきれていませんでした。

SNS全盛の時代でも、一度つながった相手には結局メールが強い。フォローされていても必ず届くとは限らないSNSに対して、メールは必ず届き、必ず開かれる。月に1度程度、当社の取り組みを発信できれば、受け手にとっても迷惑には感じられないはずです。「顧客リスト」を作りたいという構想は、代表の中で以前から温められていました。

背景にはもう一つ、新しいスタッフへの引き継ぎという切実な理由もありました。誰がどんな経緯でつながった相手かが担当者の頭の中にしかなければ、その担当者がいなくなった瞬間につながりごと失われてしまいます。

市販ツールという選択肢と、Twelfthへの相談

最初に検討したのは、WordPressのプラグインやメルマガスタンドといった市販の仕組みでした。ここで自作の一歩を踏み出さず、既存のサービスに頼る道もあったはずです。

この相談が、Twelfthへ持ちかけられました。

Twelfthが最初に描いた設計図

まず整理したのは、顧客管理システムの今昔を、実際に使う立場から振り返ることでした。

古くはExcelによる管理では、同じ相手が重複して登録されてしまうといった課題が起きやすい。その後主流になった市販のCRM(Customer Relationship Management=顧客関係管理システム。顧客先の連絡先や商談履歴などを一元管理するツール)は、機能こそ豊富なものの、入力すべき項目が多く使い方も複雑で、現場では使いこなせずに挫折してしまうことが少なくありません。

同一人物の部署異動・電話番号変更・メールアドレス変更にメンテナンスが追いつかない「名寄せ」の問題、誤って削除してしまうリスク、メルマガや定期通信を安全に自動配信する仕組みの必要性。

これらは、顧客管理システムにつきまとう典型的な課題です。今回の「顧客リスト」は、これらの課題を最初からなくすことを設計の出発点としました。

これらを踏まえてTwelfthが提示した最初の概要は、Google Workspaceの中だけで完結させるという方針でした。バックエンドはGoogleスプレッドシート1つに集約し、フロントエンドは検索機能つきの登録ページと記事管理ページを社内向けに、配信停止ページを社外の受信者向けに用意する3画面構成にしました。スプレッドシートの中身は、顧客リスト、記事、設定、送信ログという4つのシートに分けています。

商談履歴管理やタスク管理、リマインダーの機能といったCRMとしての強みは、当初は不要と判断しつつも、将来的に拡張できる余地として意識しておく方針にしました。市販CRMが挫折しやすいのは、必須入力項目の多さが一因だからです。

あわせて、オプトイン・オプトアウトへの対応方針もこの段階で確認しています。

仕様書を挟んで、代表とAIが磨き合う

Twelfthは、ヒアリングした要件をもとに「顧客リスト実装仕様書」を作成し、実装要件を明確化しました。この段階で、仕様書は完成品ではありませんでした。

受け取った代表は、その仕様書を叩き台に自ら生成AIと壁打ちを重ね、画面ごとに気づいた点を書き足していきました。Twelfthが最初の形をつくり、代表がAIとともに検証しては練り直して返す。仕様は一方通行で渡されるのではなく、両者の間を行き来しながら形になっていきました。

代表がAIとの壁打ちから得た気づきには、たとえば次のようなものがありました。

  • 登録ページでは、メールアドレスが重複しそうな場合に赤字で警告表示する
  • エリアや業種、知り合った経緯をタグ化する
  • 関係区分を整えて、現在の顧客や過去の顧客、見込み顧客、協力会社、メディア関係、行政や自治体、学校や教育機関、クリエイター、地域事業者、紹介者といった区分を用意する
  • 記事管理ページでは、本文欄を広げ、タグで絞った配信や配信前のプレビューができるようにし、なぜこのメールが届いたかを明示する
  • 状態フラグが多すぎないか

こうして持ち帰られた気づきをもとに、Twelfthが仕様を練り直していきました。

足すより、直す判断の連続

代表との壁打ちを経て練り直された仕様を、Twelfthがさらに検討を重ね、AIとのレビューを行いながら、誤配信防止や論理削除、変更が入りやすい設定項目を別シートに分けるといった、実運用を踏まえた作り込みの優先度を決めていきました。

仕様書は代表とTwelfth、双方がAIと対話しながら磨いた、いわば共同作業の産物です。ここが、この内製化事例の核心です。プロトタイプ段階では見えにくい設計の根幹に関わる部分を、一つずつ「使う側」と「作る側」が一緒に「直すか、直さないか」を判断していきました。

設計の根幹に関わるもの

配信可否は、担当者向けに1つの分かりやすいステータス表示にまとめました。
配信停止フラグや退職・異動といったステータス、配信同意の有無を個別に読み解かなくても済むよう、優先順位に基づいて配信停止、対象外、配信対象などひと目でわかるバッジに変換して画面に表示する設計です。実際に配信対象を絞り込む処理自体は、引き続きこれらの条件をすべて満たすかどうかで判定しています。

「顧客リスト」として足りていなかったもの

社内オーナー列を追加しました。誰が獲得したつながりかが分からなければ、新しいスタッフは連絡していいのか判断できません。

接触履歴を追記型にしました。複数の相手とのやり取りを人の記憶だけで抱え続けるのは現実的ではなく、あちこちに分散したメモは結局誰も管理できなくなります。上書き式のままでは、1年後には履歴が空欄同然になってしまいます。

会社名の表記ゆれにも対策しました。株式会社カズミアと(株)カズミアが別会社として登録されてしまわないよう、編集距離による類似候補の提示を導入しています。

法務まわりでしっかり押さえたもの

同意日時と同意取得方法を記録する列を設けました。特定電子メール法が求める証跡として必須だからです。

同意取得方法は、名刺交換や取引先、Webフォーム同意、イベント申込といった法的根拠の区分から選ぶ形式にしました。名刺交換によるオプトイン規制の例外にも対応できます

GAS実装ならではの注意点

二重送信も防ぎます。現状の登録件数からGASの実行時間上限に達する可能性は低いものの、万一の際にクライアントへ迷惑をかけないよう、送信ログと照合して送信済みの宛先はスキップする安全策を組み込みました。

複数のスタッフが同時に登録や編集をしても、内容が上書きされて壊れないようにしました。

費用対効果の高い小機能として追加したもの

テスト送信ボタンを用意し、送信内容に間違いがないか本番送信前に確認できるようにしました。

リンクにはUTMパラメータ(Urchin Tracking Module=そのリンクがメール経由でクリックされたことを判別するための目印)を自動で付与し、GA4(Google Analytics 4=Googleが提供するアクセス解析ツール)でメール経由のアクセスを計測できるようにしています。

逆に、初版では見送ったもの

メール本文を自社サイトに置き、メールにはリード文とリンクだけを載せる形式にする提案も出ましたが、最終的には記事本文をそのままメール本文として送る、従来どおりのシンプルな形式を採用しています。

既存データを編集・上書きする際に変更前後の内容を比較表示する差分確認モードは見送りました。社内スタッフのみが使う画面で論理削除の仕組みもあるため、必要性はリリース後に判断することにしています。

送信失敗が続いた連絡先へ自動でフラグを立てる仕組みも見送りました。まずは記事ごとの送信失敗件数を集計する形にとどめています。

現場感のある小さな工夫(実装編)

送信の仕組みには、既存の業務用Gmail(Google Workspace)を活用しました。契約中のXserverで既に運用しているメール環境には一切影響を与えない、という条件のもと、配信専用のアドレスをエイリアスとして登録し、あわせて送信ドメイン認証(DKIM:DomainKeys Identified Mail)の設定もおこないました。

派手な機能ではありませんが、既存のメール環境を崩さずに新しい送信の仕組みを重ねるには、こうした地道な一手間が欠かせません。これを踏まないと、送ったメールが受信者側で迷惑メールに振り分けられ、そもそも読んでもらえない内製ツールになってしまいます。

現場で使ってみて見えたこと

実運用が始まったのは、まだつい最近のことです。効果と呼べるほどの実績が積み上がっているわけではありません。

それでも、これまでできなかったことができるようになった実感は、すでに生まれ始めています。バラバラだったつながりが一つのリストにまとまり、月に一度、当社の取り組みを届けられる。「やろうと思いながらできていなかったこと」が動き出したことへの期待感は、確実に高まっています。

もちろん、実際に使い続けていく中では、これから課題や改善したい点も出てくるはずです。

ただ、それでいい、とも思っています。

気づいた時点ですぐに手を入れられる。外部のツールであれば要望を出して順番を待つしかない場面でも、自分たちで直しながら育てていける。これこそが、内製化の最大のメリットだと感じています。

おわりに

「顧客リスト」は、最初の概要書がそのまま実装されたわけではありません。Twelfthが仕様書を書き、代表がそれを持ってAIと壁打ちし、その気づきをTwelfthに持ち帰ってさらにAIでレビューする。仕様書を挟んで代表とTwelfthが行き来しながら、双方がAIと対話を重ねて少しずつ形を固めていきました。

前回の「スタッフカルテの事例」が「足すより、削る」判断の連続だったとすれば、顧客リストは「直す」判断の連続でした。見た目には分からない配信可否判定のロジックや、同意記録・法務対応といった地味な部分ほど、運用が始まってからでは直すのに大きな手間がかかります。

法人名 カズミア株式会社
設立 2014年
所在地 神奈川県海老名市
事業内容 Web制作、デザイン、企画・運営
Webサイト https://www.kazmia.jp/

Twelfthからのご案内

自社でも、これまでのつながりを一つのリストにまとめて資産化したい。けれど、GASのコードを組んで、法務やセキュリティも踏まえた運用まで持っていくのは難しそう。そう感じている方がいれば、私たちTwelfthがサポートすることもできます。

御社の運用に合わせた、手の届く範囲のDXを、伴走しながらお手伝いします。どうぞお気軽にご相談ください。

この記事は2026年09月公開の記事です。技術の進化等により一部内容が異なることもございます。

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