【内製化DX】経営者とスタッフをつなぐ「スタッフカルテ」をGoogle Workspaceと生成AIで内製化
生成AIを活用し中小企業の課題解決に伴走するパートナー
Twelfthを運営するデザイン・Web制作会社「カズミア株式会社」が、スタッフの強み、特性や面談メモ、診断結果といった情報がバラバラに管理されている状態を見直しました。新しいサーバーや外部ツールを導入するのではなく、使い慣れたGoogle Workspaceのスプレッドシートを基盤に「スタッフカルテ」というシステムを組み上げ、現場の声を取り入れながら少しずつ育てていった内製化DXの事例です。

INTERVIEW
カズミア株式会社
代表取締役 萩原 和哉
情報は、記録した瞬間からバラバラになっていく
面談で聞いた話はMacのメモに、スタッフの誕生日はカレンダーに、SPIなどの診断結果はPDFのまま手元に置かれていました。代表は、スタッフ一人ひとりと丁寧に向き合おうとするほど、記録する場所がバラバラになっていく現実に向き合うことになります。
きっかけは1本の動画(生成AIを活用したタレントマネジメントアプリ作成動画)でした。その動画を参考に生成AIとの対話は、プロトタイプ同士を見比べる試行錯誤を経て、最終的に手元のGoogle Workspaceだけで動く「スタッフカルテ」という一つの仕組みにたどり着きます。
その開発をTwelfthが引き受け、仕様を一つずつすり合わせながら形にしてきました。ここでは、その一部始終を記録します。
仕組み化に踏み出した理由
スタッフと会話している中で知った誕生日や好きなこと、趣味、健康状況。SPIなどの診断ツールの結果。面談のたびに話した内容やそのときの様子。代表は、これらを記録し続けていました。
問題は、記録していなかったことではなく、記録する場所が一つにまとまっていなかったことでした。
Macのメモには面談時の走り書きが、カレンダーには誕生日のメモが、診断結果のPDFはフォルダの中に散らばっている。いざ1on1の直前になって「このスタッフと話したいこと」を思い出そうとすると、あちこちを探し回ることになります。
スタッフとの1on1で会話のストックを見返したい。SPIなどの診断結果も登録して性格を知りたい。何より、経営者とスタッフとのコミュニケーションの質を上げたい。目的ははっきりしていました。足りなかったのは、それらを受け止める一つの器でした。
1本の動画とAIとの壁打ち
転機になったのは、タレントマネジメントの仕組みを紹介するYouTube動画でした。
「これ、当社でも作りたいな」
そう思い立った代表は、生成AIに向けてひとつの問いを投げかけます。
まずはどんな機能があったら良い?
対話を重ねる中で、頭の中にあった構想が少しずつ言葉になっていきました。
目的としては私=経営者とスタッフとのコミュニケーションのため。
管理者=私が見るためのものです。スタッフと会話している中で知った情報を登録したりします。(誕生日や好きなこと、趣味、健康状況など)。SPIなどの診断をしているので登録もして性格を知りたい。
面談で1on1するときのように会話のストックをしておきたい。
― 開発初期の生成AIとのやり取りより
機能のリストではなく目的から会話を始めたこと。これが、後の仕様確認のたびに「これは目的に沿っているか」で判断できる土台になりました。ここからプロトタイプを作ってもらいながら、細かい調整を重ねていくことになります。

ローカルのJSONファイルと、手間のかかるレンタルサーバー
最初に取り組んだのは、AIにその場で動くツールを作ってもらい、ローカルに置くという方法でした。しかし、データの保存先はJSONファイル頼み。使い勝手が悪く、次にどう進めればいいか迷う時間が続きました。
契約しているレンタルサーバーにアップロードすることも検討しましたが、実際に使えるツールとして動かすには別途環境構築の手間がかかりそうでした。サーバーを自前で管理する道は、ここで一旦行き止まりになりました。
GASでの制作へ、そして2つのプロトタイプ
行き詰まった末にたどり着いたのが、Google Apps Script(GAS)での制作でした。すでに使っているGoogle Workspaceのアカウントとスプレッドシートをそのまま基盤にできる。新しいサーバーも、新しい契約も要らない。この相談が、私たちTwelfthへ持ちかけられました。
開発にあたっては、まず2種類のAIにプロトタイプを作らせ、見た目を比較するところから始めました。一方の案は比較的シンプルな仕上がりでしたが、もう一方の案は、スタッフカードの色分けやアイコン、診断結果の表示までひと目で情報が入ってくるレイアウトになっていました。比較検討のうえ、後者の見た目をベースに採用し、そこから細部を詰めていくことになります。
新しく高額な外部ツールを導入するのではなく、日常的に使っている環境の可能性を掘り起こす。これが、この後の開発全体を貫く方針になりました。
できあがった仕組み
最終的に組み上がった「スタッフカルテ」は、次の5つのタブで構成されています。

5つのタブ構成
- カルテ:名前・役割・誕生日・入社日・好きなこと・健康状態・強み・経営者メモ・要フォローを1画面に集約
- 会話メモ:日々の会話で出てきたことを、その場でストック
- 1on1:面談前に伝えたいこと・注意したい話題・最近の変化を準備し、記録として残す
- 有給:付与日数と取得履歴から、残日数を自動計算
- 診断:SPI・スカウターの結果を自由記述とファイル添付で登録
はじめから5タブに絞り込めたわけではありません。ここに至るまでには、「強み・課題・期待役割」を専用タブとして独立させる案や、項目を自由に増やせる仕組みなど、検討はしたものの実装を見送った内容がいくつもありました。次章で、その判断の過程を振り返ります。
足すより、削る判断の連続
プロトタイプの段階では魅力的に見える機能ほど、実際の運用を考えると重荷になりやすいものです。仕様を一つずつ確認するやり取りの中で、代表と私たちは、次のような機能について「入れるか、削るか」を判断していきました。
タブ構成
当初6つ用意されていましたが、「強み・課題・期待役割の整理」を独立したタブにする案は見送りました。経営者メモの欄で代替でき、タブを増やす必要がなかったためです。
カルテの項目
「自由項目」欄を作り、項目名を入力するとその項目名での入力欄が動的に追加される、という仕組みも検討されました。しかし、まずは既存の項目を並べ替え、目立つ場所に「要フォロー」欄を新設するだけで十分と判断し、動的な項目追加は見送っています。
タグ機能
当初はタグごとに使用人数で絞り込んだり、よく使うタグをピン留めしたりする案まで検討していました。ですが「そもそもタグはなしで良いかもしれません」という一言で方針が転換します。代わりに、目立つ場所に「要フォロー」の入力欄を置き、気にかけるべきスタッフがひと目でわかるようにしました。
検索機能
強みや配慮事項、会話メモに付けたタグ、「誕生日が今月」といった日付ベースの検索まで拡張する案がありましたが、実装は見送りました。人数規模を考えれば、使われるようになってから検討すればいい機能だと判断したためです。
リマインダーの自動通知
誕生日前や入社記念日、面談から1ヶ月経過といった条件を自動検索して知らせる仕組みが検討されていました。これも機能としては見送り、代わりにスタッフ一覧に誕生日と有給の残日数を表示するだけにとどめています。それだけで、実用上は十分に事足りました。
診断結果の項目
性格傾向・思考タイプ・ストレス耐性・コミュニケーション傾向・リーダー適性など、7項目を構造化して入力する案もありました。しかし「とりあえず診断結果を登録したいレベル」という声を受け、結果メモや接し方の欄はカットし、タイトルとコメントの2項目に簡略化しています。
AI連携
GeminiのAPI利用も検討しましたが、新たにコストをかけるべきではないと判断しました。代わりにGeminiのGemやNotebookLMとの連携を候補とし、アプリの中に「AIに相談」ボタンを置く構想です。ただし、これは拡張機能として先送りにしており、まずは基本のカルテを整えることを優先しています。
会話メモや1on1記録の編集・削除機能
一方で、これは日付を保持したまま内容だけを直せる形でしっかり実装しました。運用が始まれば、書き間違いの修正は必ず必要になるためです。
現場感のある小さな工夫
画面の裏側にも、内製ならではの工夫が詰まっています。
たとえば、スタッフのアイコンや会社のロゴ画像の扱い。一般的には画像専用のフォルダを別に用意し、シート側にはそのリンクだけを保存する方法がよく使われます。ただ今回は、管理する場所を増やしたくなかったため、できる限りスプレッドシート1つで完結する構成にこだわりました。
そこで採用したのが、画像を文字列に変換してセルの中にそのまま保存する方法です。とはいえ、スプレッドシートの1セルには約5万文字までしか入らないという制限があります。そのままでは画像1枚でもすぐに上限を超えてしまうため、アップロードされた瞬間に画像を自動で縮小・圧縮し、Base64という形式でテキスト化してから保存する処理を組み込みました。サーバーを持たず、スプレッドシートだけでデータを完結させる構成だからこそ必要になった、地味だが効く一手です。
現場で使ってみて見えたこと
運用が始まってから、代表の中には確かな変化が生まれています。
大事な情報が1箇所にあるという安心感は、想像していた以上に大きなものでした。1on1の前にメモを見返し忘れることがなくなり、そもそも「これ、どこにメモしよう」と迷う瞬間そのものがなくなったといいます。
散らばっていた記憶が一つの場所に集まったことで、経営者の「気にかける力」を仕組みが支えるようになりました。
おわりに
今回の「スタッフカルテ」は、一度にすべてを作り込んだものではありません。AIとの壁打ちで目的を言語化し、複数のプロトタイプを見比べ、機能をひとつずつ「入れるか、削るか」判断しながら、少しずつ形を固めていきました。
採用した機能と同じくらい、見送った機能にも意味があります。何を削り、なぜ削ったのかを記録しておくことは、後から機能を足すときの判断基準にもなります。
見送ったAI連携も、その一つです。生成AIはこれからも進化を続けていくはずで、その先に実装したい機能はまだいくつも出てくるでしょう。常にその動きをウォッチし続け、機が来たときにすぐ手を動かせる。これも、自社で内製しているからこその強みだと感じています。
スタッフカードの色分けタグも検索も自動通知もない。それでも、現場は十分に回っています。完璧な設計より、まず動くものから。これも、内製化ならではの進め方だったと感じています。
| 法人名 | カズミア株式会社 |
|---|---|
| 設立 | 2014年 |
| 所在地 | 神奈川県海老名市 |
| 事業内容 | Web制作、デザイン、企画・運営 |
| Webサイト | https://www.kazmia.jp/ |
Twelfthからのご案内
自社でもスタッフの情報を一つにまとめたいけれど、GASのコードを組んで運用まで持っていくのは難しそう。そう感じている方がいれば、私たちTwelfthがサポートすることもできます。
御社の運用に合わせた、手の届く範囲のDXを、伴走しながらお手伝いします。どうぞお気軽にご相談ください。
この記事は2026年09月公開の記事です。技術の進化等により一部内容が異なることもございます。


